先日、私は池袋のとあるホテルの一室で客を待ち構えていた。
所謂ホ〇〇ル的なシステムのサービスを利用したのだが事務所的な場所でサービス代金を支払い、ホテルの部屋についたらサービス元に連絡を入れて待つ...といったシステムだ。
来客者は事前に選んでいるからチェンジやキャンセル的なことは出来ない、というよりも自分好みを選んでいるのでお断りをする予定はさらさらないのだ。
にも関わらず事後に私は激しく後悔をした。
「なぜオレは金を払ってまで、果てたフリをしてまで...」
様々な欲望の蠢く巨大ターミナル池袋駅の北口周辺は男のため息がひどく似あう駅だ。
駐車場で深いため息をこく男
その日、男が選んだ客人は100k越えのヘビー級だった。
男が好む階級はスーパーヘビー級~ライトヘビー級なのだがチャレンジ精神が溜まりまくっていた男はあろうことかヘビー級をチョイス。
過去に散々ヘビー級で失敗した経験があるにも関わらず再び...彼は本当に懲りない男だ。
「私は今日、ワガママに強く押しつぶされたい。」
なぜ彼はこうなってしまうのだろうか?
結果的に男は”押しつぶされる”といった欲望こそ叶ったものの重圧による苦しみの記憶ばかりが残ってしまった。
しかもそれだけではない、早く密室的な空間から逃れたい一心で男はフィニッシュしていないのにも関わらずフィニッシュしたフリ(演技)をしたのだ。
池袋駅周辺...と、決して安くはないコインパーキングで男はエンジンをかけたまま、頭を抱えながら深いため息をこくばかりだった。
オニイサン、ドウシタノ?ダイジョウブ?
駐車場で深いため息をこきながら頭をかかえる男、
しばらくして車の窓を”コンコン”と叩く音で我に返る。
「オニイサン、ドウシタノ?ダイジョウブ?」
窓を開けるとアジアンテイストの女性が大丈夫か?と話かけてきた。
彼女はおぼつかない日本語で頭をかかえる男を心配して話かけて...ではなかった。
ここは池袋駅北口周辺のコインパーキング、場所柄だろうか、自分から積極的にアピールをしてくる営業ウーマンもいる場所だ。
車の窓越しに数マン単位のマネーと時間の話しかしないアジアンテイストに嫌気がさした男の頭の中は急いで自宅に帰りパソコンでお気に入りの動画を見ることでいっぱいだった。
絶望的な深いため息とともに男はアジアンテイストに500円玉をあげて「頑張ってね、ご苦労さま」とまともな社会生活をおくっていて今はたまたま仕事で問題があったので頭を抱えてため息をこいていただけですよな俺を演じつつ帰路につくのみだった。
顔面を徹底的に洗浄、ため息から解放
男は自宅につくなり風呂場へ直行、気温の高い時期にしては42℃といった高温のシャワーで顔面を徹底的に洗浄した。
リセットしたかったのだ、あの重苦しい重圧を受け止めた己の顔面を。
42℃のシャワーで顔面の毛穴~鼻毛まで完璧に洗浄した男からはもうため息が出ることはなかった。
男は生まれ変わり、もう二度とヘビー級には手を出すまいと決意を胸に今日も仕事へ旅立つ。
短編小説 男のため息(おっさん編)完
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。
内容は全てフィクションです。